カエル

2007年8月ラオス、パクセー市内の大きな市場で撮影した。3泊4日のノンヒンカオ村取材を終えてパクセーというラオス南部の大きな都市に戻った翌日、ビエンチャンに移動する前の慌ただしい時間、市場の取材を行った。ビエンチャン、ルアンプラバン、パクセーとラオスの大都市の市場を取材したが、生きたカエルはここでしか見なかった。ノンヒンカオ村の小さな商店で乾燥させたカエルを売っているのを見てきた後だったので、このカエル達もいづれあのような乾燥された姿になるのか、またはこのまま調理されて食卓に乗るのか-----

思い切り話は変わるが、渋谷の道玄坂、正確には道玄小路というところに麗郷(レイキョウ)という香港料理の店があり、今はなくなったが、昔は通りに面した一角をガラス張りにしその内側の食用ガエルの生簀が見えるようにしていた。当時カエルはそこの人気メニューであったため当方も注文して食べたことがあるが、当然のごとく丸ごとではなく、後脚の腿の部分を唐揚げにした状態だったが、鶏肉の唐揚げと似たあっさりした味であった。

その記憶があるため、パクセーの市場のカエルを見たとき、生きた魚やエビ、カニを見るのと同じ感慨しかなかったが、

後からこの映像を人に見せたら気味悪がる人がたくさんいて少々当惑。

興に乗ったついでにもう少し書いてみよう。

当方が28歳の時、3歳になった娘を連れ家族3人で1年近くパリ郊外で生活していた。テキスタイルデザインの会社に勤めていた関係である現代美術作品のパフォーマンスに駆出され、その後展覧会のオープニングパーティーにも参加した。エッフェル塔をセーヌ川を挟んで真正面に見る美術館だったので近代美術館だったかも知れない。そのセーヌ川に面した中庭で、2m近くある牛1頭が大きな工事現場の足場のような太い鉄棒に頭を付けたまま串刺しにされ、宙に横たえられ盛大なたき火で丸焼きにされた。

それまでもカルチェラタンの飲食街では店頭で頭を付けたままの豚を何頭も丸焼きにしているのを見ていたのだが、さすがに牛1頭丸ごとというのは初めて見たので心底度肝を抜かれた。自分が駆出された現代美術の作品なんかより、そちらの丸焼きにされる牛の印象の方がより強く記憶に残っている。

何を書きたかったかというと、スーパーやコンビニのパックに切り分けられた肉を通してでも、生きていたときの姿や声がイメージできなければ面白くない、世の中楽しくないのではないかということ。

丸焼きの牛がどうなったかというと、実はその翌日食い荒らされた残骸しか見ていない。当方がその会場にいた時間4,5時間だったと思うが、火が大きすぎて近づくこともできず、牛が大きすぎて全体に火が回るように牛を回転させることもできずということで、炎にあぶられる牛の姿を見ただけ。翌日聞いたところでは、最終的には牛を下におろし、たまっていた炭をかぶせて蒸し焼きのようにしたようだ。食べられるようにするために一晩中かかっていたのではないかと思う。

30年経った今でもレストランでステーキを食べる時にはそのシーンが思い出され、あの時食べていたらと思う。

2010.08 タイ チェンライ市内市場

 ◆ラオス  パクセー市場 及びパクセー郊外 ノンヒンカオ村

干しカエル_2007 / 2007.08 ノンヒンカオ村(パクセー)

( Youtube動画再生  01’51)

市場のカエル_2007 / 2007.08 パクセー市内

( Youtube動画再生  00’47)

 ◆参考資料

2010.08 タイ HHL/チェンライ 村のカエル養殖池