ナンヤン村の着生

2006年8月ラオス ルアンパバン郊外 ナンヤン村で撮影したもの。村の周囲を流れる川岸からほど近い大きな木の幹を見上げると、蔓植物に混じって着生のシダやラン科の植物が沢山しがみ着いているのが見えた。残念ながら花の時期ではなかったらしく、花は見えなかった。種名はわからないが気根の長さから、この木を住処に長い期間ここで世代を積み上げて来たことが想像できた。

村の働き盛りの男達が田や畑の仕事に行っている昼下がり、 この木の下では村の女性達が織物にする木綿の糸をウコンの木片と一緒に煮出して赤い糸にする染色作業を行っていた。そのすぐ近くの大きなヤシの木の下に作られた素朴なかまどと蒸留の器具を使い、薪の熱と煙に汗だくになった女性が醗酵させた米を蒸して焼酎を作っていた。若い娘達は高床の下に置かれた織り機で機織りをし、年老いた男達はカオニャンを入れる竹籠を編んでいた。

2007年、こんなのどかな悠久の営みとも思えた村の生活に大きな変化が起こった。右上の写真に見える村の中央を通る道路の両側に立つ大きなヤシの木の多くが、電柱を立てる、電線を張る邪魔になるからと切り倒された。

電気のある生活は村人の切なる願いの一つであった。2006年8月我々が取材に行った時点で既に村のところどころにコンクリートの電柱が横たえられていた。日本から村の生活を体験に行った感覚からすると、電柱よりもヤシの方が美しいと思う。村人からすれば否応なく押し寄せている都市化(電化)に対応して行かなければならない。

そんな村の変化を、このランやシダを着生させた木は今でも見つめているのだろうか。

※右上の高床の建物の写真はMr.トンワン氏の写真です。

 ◆2006年8月 ラオス  ルアンプラバン郊外 ナンヤン村

トケイソウ_2006 /ラオス ナンヤン村(ルアンパバン)

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