ランの自生地A

 ラオスのランの自生地を探訪するエコツアーのアイデアは、2007年のラオス・パクセー取材からの帰りに寄った大きな滝のある観光地で地元の人がランの店を開いているのを見たときだ。店には自然の状態に近い山取りのランが無造作に並べられていて、この地域のランの豊富さを物語っていた。観光地での時間はほんのわずかだったので、このような滝のある空中湿度が保たれた森を、自生のランの姿を追い求めて自由に歩けたら何と素晴しいだろう。という自分の夢を口にしたところ、同行の旅行代理店の人から面白そうと後押しの言葉があったので、少しづつアイデアを積み重ねて「ラン自生地探訪」「デジカメ教室」「ホームページ教室」「地域のラン育成支援」「ランの育成環境保護」をセットにしたツアーと、考えを展開して行った。

 2010年秋口には、旅行代理店担当者から2011年2月の東京ドームラン展でどのくらいの集客反応が得られるかブースを出してみようと、この企画に対しての積極的な取り組み姿勢を見せていただいた。が、ラン展事務局の法外のブース料金の要求に応えられず中途で止まっている。

 そうこうするうちに共通の友人つながりでボルネオのランの写真家・稲守敏朗氏とお話をする機会を得て、自然の環境保護に役立ちたいという共通目的の下で意気投合し、稲守氏の「ボルネオのランの保護と地元先住民の自立支援活動」のお手伝いや、ボルネオだけでなくタイやラオスほか東南アジア全体の自然、野性の保護に結びつくエコツアーを展開しようと話が進んだ。

 まあここまではどこにでも良くある「お話」なので、それで終わらせないためということで、今回、ラオス取材では、そのエコツアーに結びつく候補地の選択と下見を兼ねることとした。

 当初の計画としてはこのビエンチャン郊外の自然保護区ではなく、ビエンチャンからさらに南下して、ランの自生地探訪を夢見たパクセー近郊の自然林を検討したのだが、8月というのはランの開花期から外れていることから、ひとまずはビエンチャン近郊で下見を行うことなった。

 まずは2011.08.13のビエンチャン郊外プーカオクワイ自然保護区のランの自生を見てください。

2011.08.13 赤いヤッケの男性がここ自然保護区のレンジャー、彼の案内で安全なルートを確保する

ラオス ビエンチャン郊外 プーカオクワイ自然保護区のランの着生

2011.08.13 川の流れに近い太い木にはシダとランがビッシリ着生している。

2011.08.13 ここではセロジネ、デンドロ、バルボが多く見られる

2011.08.13 両脇はバルボフィラム・トリコノイデス/Bulb.tricornoides か

2011.08.13 地面から1m以下はかなり薄暗いがそこでも適合したランがしっかり陣地を得ている。これもバルボ

2011.08.13 足下近くに胡蝶蘭の原種ファレノプシス・デクムベンス?の開花株を見つけた。Mr,トンワン氏の作棚や市内のラン屋で開花していたものと同じ。つまり、Mr.トンワン氏の作棚を観察していれば自生地の開花状況をある程度把握できるということ。視点を変えれば、ビエンチャン市内でも大掛かりな機具や装置に頼らずに自生地の環境に近い状態を再現、維持できるということはうらやましい限り。

 2011.08.13 これは自然保護区入り口に立てられたプレート。国旗や文字を見てお判りのように、この森のランの調査や保護に韓国が積極的に乗り出していることが示されている。きっとこの森だけでなく、多くの自然環境そのものを「種の多様性保護条例」対策の自国の代替候補地として、共同研究の名の下に蚕食されていると推測する。自然保護はより多くの国と地域が積極的に取り組めばいいのだが。この看板は何か排他的な色彩が窺える。


 個人的にはラオスの「ランの自生地探訪」、「昆虫の観察」など自然をテーマにしたエコツアーは大変有望だと考えている。

 この森だけでなく、ランの自生地はたくさんあるようだ。今後はクアントン氏やトンワン氏を初めとする現地の人達と協力して、ランの自生環境を保護しながら観光客を受入れや採算の取れる地場を育成するプランを進めなくてはならないだろう。(事実上頓挫)


と、思いを高め、稲守氏の発見したボルネオのランを中核に置いたドームラン展の計画など追い風が吹く中、稲守氏が急逝(202.6月)してしまった。途方に暮れたまま、何もしないまま時間が容赦なく過ぎている。あまりの突然のことだったからであろう、ご遺族から稲守氏の意志を引き継ぐメッセージが届かない。それがない限り動きようがなかったのだ。(言い訳)

プーカオクワイ自然保護区 01_1108Laos

( Youtube動画再生  01’31)

2011.08.13 プーカオクワイ自然保護区

 ◆追記:ハベナリア・ロドケイラ (ラン科) 2011.08.13 プーカオクワイ自然保護区

3点とも 2011.08.13 ビエンチャン郊外 プーカオクワイ自然保護区(K)

上の2点は当方が同じところでクアントンしの隣に並んで撮影したもの。