カナダ  各地

Abies firma / モミ

クリスマスツリーの木である。当方にとってのカナディアンロッキーを表す樹木そのものといってもいいだろう。標高1,500m辺りまでは白樺などの樹木が混生するが、2,000mを越えた辺りからはモミの単純相となる。当方が行ったカナディアンロッキーを北海道大雪と同緯度とした場合、大雪では標高1,500m辺りで森林限界となるが、カナディアンロッキーではそれより遥かに高いところにモミの樹林帯が観察された。上部中段左の写真が示すように、写真中央部の黒い筋はモミの樹林であり、推測する高度は3,000m以上である。なぜこのような高いところで生育できるのか不思議な気がするのと同時に、どのようにしてあのような高いところに種が運ばれ着生することができたのか不思議に感じた。

ここからは単純な推理ゲームだが、ロッキー山脈が形成する前からモミの樹林があって、地面の隆起と一緒に樹林帯そのものも高いところに運ばれたと考えられないか。

現実に戻るが興味深い観察をした。カナダロケに出発する前に国内のニュースで大規模なカナディアンロッキーの森林火災が報じられていた。高地ロケの終盤、コロンビア・アイスフィールドからジャスパーに移動する車窓からモミの樹林が真っ黒になって立ち枯れているところをいくつも通過した。火災で焼けた後ならば枝先は燃え尽きて地面に落ち周囲を汚しているだろう。しかし全てが幹から枝先まで生きていたときのままの姿を留めたまま見渡す限り黒化した膨大な樹林は不思議な静けさをもって当方を見下ろしていた。

今回のロケの初日、オイルサンドを開発しているシンクルード社を取材した時のこと、その廊下の壁に1枚のポスターが貼られていた。そこには日本で良くみられるゴマダラカミキリが大きく写されていた。カナダの森林を滅ぼす害虫を駆逐しようというスローガンだった。

カナダ人コーディネータの説明ではモミの樹林の黒化の原因は山火事(自然発火)ではなくマツクイムシまたは、マツクイムシの害を閉じ込めるために、被害の大きい樹林を人為的に焼いた部分であるということだった。半分は納得したが腑に落ちないところも沢山あった。灰はどこにいったの。虫はどこにいるの。1匹でも虫を見たならもっとうなずけるのに。

高地ロケの最終日ジャスパーのマウントウィスラーズに登った時、コーディネータが我々はラッキーだったといった。それは、その前日まで山火事の煙がロッキーの山並みを隠していて撮影は難しかったらしい。無責任だが山火事も見てみたかった。

2009.08.23 ジャスパー

2009.08.23 ジャスパー

マツ科 モミ属 針葉樹 

2009.08.23 ジャスパー

2009.08.23 ジャスパー

2009.08.22 コロンビア・アイスフィールド近く

2009.08.22 デイビッド・トンプソンリゾート