2003.04.26 自宅 コルクに着生させている
ラン科 カヤラン属 多年草 渓流沿いの樹木に着生
カヤラン/Sarcochilus japonicus
2003.04.26 自宅 このカヤランは正丸峠の小さな商店のお婆さんから分けてもらったものをコルクに着けたもの。この商店では5月が近づくとお婆さん手作りの草餅が売られ、その素朴な味がたまらず、正丸の自然が楽しみなのか、草餅が楽しみなのか、毎年数回足を運ぶ。行けば必ず草餅を所望するが、常時作っている訳ではなく、どちらかというと気まぐれに作っている風なので、ないこともしばしば。しかしこのお婆さんの店先には草餅に倍加する楽しみがある。林業をしている息子さんが杉の枝打ち作業などの合間に採集したカヤランがたくさん仕立てられていて、草餅がなくてもカヤランを見れるだけで充分正丸まで足を運んだことが報われる。
この商店からゆるやかな峠道を300mも登って行くと右手に沢が見られるようになり、その沢筋に植えられた梅の老木の沢に張り出した枝にカヤランがたくさん着生しているのが見られる。その先の沢筋の峠道の周りの樹木を観察すれば、思いのほか人里の中にも自然状態のカヤランが残っているのが見て取れ、なんだかとてもうれしくなる。
カヤランで印象に残っているのは、15年以上前のこと、当方にランの趣味を植え付けた友人の誘いでその故郷である四国・徳島県の上勝に行った。勝浦川の最上流部近くまでバイクで登ったところはあまり手入れがされているとは言いがたい背の低い杉の森になっていて、その杉の幹や枝にびっしりとカヤランやオサラン、モミランといった小型の着生ランが着いていた。それこそカヤランをビニール袋一杯採集するのにたいして時間もかからなかった。その昔この地域では割れ物などを発送する時に隙間にカヤランを詰めて送ったという。アメリカからの荷物のクッションに クローバー(シロツメクサ)が使われたと同じ様。それほど多かったということだった。
関東ではそれほどのカヤランの密度の濃いところは知らないが、正丸の他には奥多摩でも五日市でも沢の上流部の手入れの悪い杉林を観察すれば以外と見つけるのは簡単。
ただ、都会でカヤランやモミランは育てるのはかなり難しい。耐寒性は強いが高温や乾燥に弱く、自然の状態のものを採集して来てもすぐに枯れてしまう。やはり野に置けである。
カヤラン01_2003_正丸
( Youtube動画再生 00’58)
カヤラン02_2003_正丸,自宅
( Youtube動画再生 00’38)
カヤラン03_180704_正丸
( Youtube動画再生 01’03)
2018.07.04 これは2003年に撮影したのと同じ木に着生していたカヤラン。花はとうに終わり、種を孕んだ莢が元気さをアピールしていた。
上に書いた草もちを作るお婆さんは既にお亡くなりになり、お店も普通の民家に戻っているが、今年4月4日、正丸のクマガイソウのある個人宅の庭の前に、峠を越えてきたハイカーを迎える小さな茶店があり、そこに亡くなったお婆さんの次女が手伝いに来ているのを知った。嬉しいことに懐かしい草もちも提供されていたが、この日(7/4)は平日だったので、その茶店は閉じていて草もちを見ることもできなかったが、カヤランの元気な姿に出会うことができた。15年という月日のなんと短いことか。