村で工作

シュロの採取_1210Thai

( Youtube動画再生  01’41)

2012.10 HHL/チェンライ

タケの採取_1210Thai

( Youtube動画再生  01’13)

2012.10 HHL/チェンライ

村での工作のきっかけは、植物編のランの項で記したが、前年、村の家々の壁や床が竹から木の板材に変えられてきた影響なのか、枯れて切り倒され放置されたタケを山でたくさん見たことである。日本の竹林で見られるものより太くて厚い立派な竹である。これを何かに加工して利用できないかが一つ。もう一つは村の換金作物の一つとして定着しつつある養蜂について、近隣の村々が追随してきた時に差別化する意匠・工夫があればより安定するであろうと考えた。そして後者のアイデアをいくつか念頭に村に入ってトライしたのがシュロの葉を利用すること。

沖縄泡盛の銘柄?で「どなん」「与那国/花酒」を知っている人はピンと来ると思うが、「どなん」や「与那国」のクバ巻きのクバとはシュロのこと。当方はイメージとして記憶はしているものの、ノンアルコール人間なので、触れたりクバを破いたりしていないので、具体的な加工法がどうなっているのかほとんどわかっていない。素材として使用することが可能であるという前提条件だけを頼りにぶっつけ本番。上手くできる筈がない。2012.10月のシュロ採集映像をご覧いただければわかると思うが、葉が大きい。直径が150cm程ある。漬け物桶を包めるくらいの大きさである。村の若者がとりわけ大きく立派なものを採集してくれたので使わないわけにもいかず、エイヤッと作ったものが今回の作。昔の囲炉裏端の炭入れみたいになってしまった。乞う次回作。きっともう少し狙いが伝わるようなものになるはず。

弁解:狙いの提示

 ・村の素材を意匠に利用する→クバ=シュロを素材として利用する/ネットで泡盛意匠参照のこと

 ・近距離であればボール紙やビニールパッキングを要さないで搬送できる(クッション材としての機能)

 ・展示する時に他との大きな差別をはかれる(プラボトルより高級感を持たせられる)

 ・お年寄り、女性や子どもの労力で加工できる

 ○後はデザインの問題、狙いが伝われば村人が勝手に考案すると思う

 ○今回も山で蔓を採集したが、山にはいろいろな天然素材があるので、シュロだけが有効なのではない。

竹で作りたいのは村にあるランや着生シダを育てるためのラン鉢。

ラン鉢としてのデザインはいろいろ考えられる。小割りにして木のバスケット様にすることも可能だし、素材の竹の太さを訴えるデザインもいろいろあるだろう。

この2ページ前に「村の道具」を示したが、ほとんどが手仕事・手作業のもの。最近は発電機を使った電気工具も見られるが、まずは人力の工具で出来る範囲の加工を考えたとき、竹用のノコギリがない。山刀(鉈)があったからノコギリは必要とされてこなかったということ。次に、竹に丸い穴をあける道具がない。

そこで2つの道具を日本およびチェンライ市内で購入して村に持ち込んだ。

 ・折りたたみノコギリ(一般材木用、竹用各1個)

 ・クリックボール(ハンドドリル)+木工用ドリル替え刃2セット

 ○当方がランを育てるのに使用している鉢の写真

持ち込むことを後押ししたのは

 ・タイ航空のマイレージが貯まり、手荷物制限10kg追加=30kgまでOKとなっていること。

 ・村に滞在している研究者から、村人は「道具」が大好きという感想

反応は下の写真が表しているので文章はいらない

◆竹細工
◆シュロ細工

上は当方がラン用に使っている鉢。左は太い竹。中央上はヘゴ、下はスリットの入った素焼き鉢。右は手桶を加工したもの。

◆2013.02  HHL 下は当方が持参した道具を使って村で作ったもの。

2013.02〜03 HHL 滝本さんPhoto  スリット鉢を竹で再現しようと奮闘している筆者。細部の加工はこの家のご主人の道具=金槌とマイナスドライバーを借りて。

今回の村で作成した試作品は3ヶ月が過ぎた今頃は、既に壊れていると推測する。生の竹を使っていること。竹をいじめていること。乾燥の速度が部分によって異なるため、収縮する力が一定ではないためひずみが生じ繊維の方向(縦)に割れると思われる。木でも竹でも一般的には生の状態のものは1年とか2年とか寝かせ、充分に乾燥させてから細工をしなければならない。しかし、今回の工作の目的は「日本の道具」の使い方を見てもらうこと。そして、日本人も手工芸が好きという姿を見てもらうということ。(当方は左利きなので道具の使い方の参考にはならなかったかも知れない。持ち込んだ道具でも村の山刀でも持ち手が違うことから、力の入れ方(方向)が異なるのだ)(知ったかぶり:日本のノコギリの刃は手前に引く時に力が加わるように作られている。日本人はそれに慣れているから刃物はなんでも手前に引くと切れると身体が反応する。村で使われていたノコギリは押して切るタイプだった。だから村人が当方が持参した日本のノコギリを使う時には引いて切るということを何度もジェスチャーで示すのだが、それぞれ身体が勝手に反応するので2、3回ノコギリを往復させるうちに押し切りになってしまっていた。慣れを待つしかない。このノコギリの文化=日本刀の文化であるのかも知れないが、日本以外のレストランの食事に使われるナイフは押して切ると考えた方が外れが少ない。引いて駄目なら押してみなである)

試作品は壊れてもいい。壊れたのを見て村の人が部族のDNAに埋め込まれた竹の加工技術で別の形や機能に作り替えてくれるだろう。

先ずはそれが目標ではあるが、もっとも肝心なのは、植え込まれるランがこれら竹で作る鉢が気に入るか否か。ランが元気に育ってくれなければ意味がない。元気に育ちきれいな花を咲かせたランが人を引きつけ、それを包み込んだ竹製の鉢にも注目が集まり、自分も竹を使いたいと思わせるのが目的である。

下段の6点の写真の内、中段の2枚以外、4点は滝本さんPhoto.

2013.02 HHL 筆島さんPhoto。 左の写真のご主人が手に持っているのがクリックボール(ハンドドリル)

2013.08 タイ、HHL/チェンライ県 シュロ籠 2

2012.12 自宅 籐籠(上は2011年作成)

◆参考資料